2011年11月7日月曜日
movie-3 『わたしを離さないで』
生命のタブーを真向から取り上げたカズオイシグロの小説『わたしを離さないで』の映画化。生命与奪の映画である。
女子寄宿舎風の学校(男子生徒もおしなべて女性的なのである)ヘールシャムからのプロローグ。
臓器提供の目的でつくられたクローン人間を教育する学校ヘールシャム。彼らは、成人になると自分の臓器を提供しなければならない。1回の提供で終了(死)するものもいれば、2回、3回、4回で終了するものもいる。終了するまでの臓器提供が彼らの生きるミッションなのである。
ヘールシャムの先生は全て女性なのである。女性を中心とした社会構成にして、この厳しい現実を弱めているので受け入れやすい。男が登場すると、厳しい現実が暴力的に感じられ、拒絶反応を起こしかねない。そんなハードな内容なのである。
しかし、終了するまで臓器を提供しなければならないとは、何回も処刑するようなもので残酷極まりない。
ルース(キーラナイトリー)の終了の手術で、取り出された臓器が彼女の死と入れ替わるシーンは映画ならではの描写でえらく納得できた。
お金の為に自分の何かを献体したであろうと思わせるオリジナルが、彼らの親であり、「わたしのオリジナルはゴミための中にあるのよ」とクローン(コピー人間)に云わせるところもスゴイ!
彼らが人間の尊厳を持って生きることは許されない。コピーのコピーが劣化するように、クローンの繰り返しは劣化するの理論(多分)から、クローンの恋愛、結婚は許可されない。
『愛の嵐』のシャーロットランプリングが校長役で登場する。最近『彼が2度愛したS』でも、会社オーナー役で、ハッとさせられた。ちょい役でもインパクトのある演技で、さすが、と思わせる。
キャシー役のケリーマリガンの含蓄のある表情も、大女優の品格が備わって素晴らしい!
現代的モチーフを小説にするカズオイシグロには脱帽。
原作を読んでいないけれど、映画でカズオイシグロを楽しませていただきました。
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