2014年12月27日土曜日

ラブシーン品定め





 源氏物語の中で、梅雨の夜長、光源氏と頭中将が手前勝手に女性についてあれこれ品定めしたように、私も映画の中のラブシーンについてあれこれ品定めをしてみようと思う。ちょっと大胆でしょ。

 最近、『アデル、ブルーは熱い色』を観た。最近の映画では珍しく堂々3時間上映である。
 チュニジア出身のアブデラティフ・ケシシュ(舌がもつれちゃう、笑)監督、脚本による、2013年のフランスの恋愛ドラマ映画である。彼自身俳優でもあるらしい。

 ジュリー・マロという漫画家による、2010年のフランスの漫画『ブルーは熱い色』が原作らしい。漫画もすごいね! 注意!漫画と云わずグラフィックノベルと言うらしいよ。

 第66回カンヌ国際映画祭で最高賞であるパルム・ドールを史上初めて監督のほかに出演女優の2人にも贈られた。カンヌでもそうだったらしいけど、とにかくラブシーンというよりセックスシーンが過激で度肝をぬかれてしまいます。日本では映画倫理委員会からR18+に指定された。



        


 アデル役はアデル・エグザルホプロス19才。画家のエマ役はレア・セドゥ29才。どちらもフランスの女優。レア・セドゥはウディ・アレンの『ミッドナイト・イン・パリ』『マリー・アントワネットに別れをつげて』でファンになった 私のお気に入りの女優さんです。


レア・セドゥ


 二人はレズビアン関係で、各々の生活、アデルは保育園の先生らしく、エマは新進の画家で、アデルをモデルにレズビアンとはっきり解る絵を描いている。この絵結構ショッキングだった。

 セックスシーンは衝撃的だけれど、フランスの女性の生活ぶりを興味深く見せてもらった。フランス人の個人主義の表現は、保育園の幼い子供達にもしっかりあり、感心してしまった。この個人にこのセックスシーンあり、である。

 映画に立体的深みを持たせるにはラブシーンは必要不可欠で、その人のひととなりの重要な情報源である。アデルの寝姿の口元から、彼女のルーズな性癖がよく現れていた。エマの独占欲、潔癖症は彼女の芸術に必要不可欠と思われる。

 映画の中でのスパゲッティを食べるシーンは、セックスシーンと同等に表現されている。人間にとって性欲、食欲は基本であり、そこに文化が肉付けされて立体的な人間像が形成されていく。と私は思う。


 アデルのラブシーンを上回るセックスシーンは、2007年につくられたアン・リー監督の Lust, Caution 『ラストコーション』。第64回ヴェネツィア国際映画祭で受賞。台湾のアカデミー賞にあたる第44回金馬奨でも作品賞・監督賞・最優秀主演男優賞(トニー・レオン)を受賞している。




 二人のセックスシーンは、第二次世界大戦中の日本軍による占領下となっていた香港と上海を抜きには考えられない。抗日組織の弾圧を任務とする特務機関員(トニー・レオン)の暗殺計画をめぐって、暗殺を目論む女スパイ(工作員)と、暗殺対象となった特務機関員との間に芽生えた、深淵なる孤独の共有がセックスシーンを認めさせている。




 アン・リー監督では『ブロークバック・マウンテン』が記憶に残っている。アメリカ、ワイオミング州を舞台にした、同性愛者のカウボーイ、イニスとジャックの物語。 
 監督は2005年に『ブロークバック・マウンテン』で第78回アカデミー監督賞を受賞している。



 ニコールキッドマンとジュードロウの南北戦争を背景にした純愛ドラマ、2003年制作のCold Mountain 『コールド マウンテン』


 南北戦争末期、南軍の兵士であったインマンが最愛の女性エイダに再び合うため脱走し、徒歩でコールドマウンテンに向かいクライマックス、山小屋でのラブシーンは美男美女相思相愛の美しいものでした。監督は苦労に苦労の結果、二人に最高のラブシーンをプレゼントした。このラブシーンは長かったと記憶している。


 ニコールキッドマンといえば、

2006年制作の『毛皮のエロス/ダイアン・アーバス 幻想のポートレイト』原題は『FUR』。実在の作家をモチーフにした映画としては、珍しく成功している。





 

ダイアン・アーバス


 あの伝説の写真家ダイアン・アーバスを主人公に、物語をフィクション仕立てにした映画だった。フリークスをモチーフに気持ちの悪い怪奇的写真はこれが真実か、と目を背けたくなる、と言ったら問題かな。

 そのダイアンと全身毛皮だらけの男とのラブシーン(この時はハンサムなロバートダウニーJr.だからご安心を)も印象に残っている。  
 この映画のロバートダウニーJr.は最高だと思う。セクシーでコミカル、彼の良さが存分に発揮されている。


 ラブシーンはそれだけ取り上げたらポルノになってしまうけど、映画の舞台背景、登場人物の掘り下げを付帯して観ると、映画を地図から丸い地球儀にしてしまう不思議なものだと思う。地図を見るのも楽しいけれど、地球儀をコロコロ廻して見るのも楽しいでしょ。