映画のポスターを見て、ニコールキッドマンは誰を演じてるのかどうしてもわからず、それを確認するために観た映画
『めぐりあう時間たち』(原題 The Hours)。 2003年日本公開。
クラリッサの元恋人に エド ハリス Ed Harris がエイズに冒された詩人小説家を演じている。私は2000年の『スターリングラード』のドイツのスナイパー、ケーニッヒ少佐の演技が忘れられない、彼はしゃべれない方がいい演技ができると思うけど。
監督スティーブン ダルドリー Stephen David Daldry 主演のヴァージニア・ウルフ Virginia Woolf にニコール・キッドマン Nicole Mary Kidman、小説『ダロウェイ夫人』を愛読する主婦ローラ・ブラウンにジュリアン・ムーア Julianne Moore、編集者のクラリッサ・ヴォーンにメリル・ストリープ Meryl Streep。
各々1923年の英国リッチモンド、1951年のロサンゼルス、2001年のNYが舞台。3人の登場人物はウルフの小説『ダロウェイ夫人』を軸に深い関係で結ばれている。終盤にその関係が明かされる。これはヴァージニア・ウルフ(1882年 - 1941年)という複雑な芸術家のこころの闇に引き込まれる映画である。
ウルフの父、レズリー・スティーヴン(1832年 - 1904年)は歴史家、伝記作家、批評家、編集者、そして登山家であり『英国人名辞典』Dictionary of National Biography の編纂者として知られる。
母親のジュリア (1846年 - 1895年) は美人の誉れ高く、ラファエル前派のモデルもつとめた。文学に造詣が深く、豊かな人脈を知己に持つ両親のもとでウルフは育った。
母ジュリア |
とてもエキサイトなのが、両親亡き後、姉のヴァネッサとブルームズベリー地区にブルームズベリーグループをつくり、当時としてはかなり進歩的な思想によるサロンを非公式に持っていたこと。そこで夫となるレナード・ウルフとも知り合う、と同時にグループに属する女性とも関係をもつ。つまりバイセクシャルである。この組織では同性愛は公認されていた。第二次世界大戦当時も英国では同性愛は罰せられていたことを考えると如何に進歩的かがわかる。
とにかく調べれば調べる程複雑な人物で、始末に負えない。そんなニヒリスティック(nihilistic)で複雑なヴァージニア・ウルフのこころの呪縛にかかってしまう、暗い映画なのだ。だって登場人物がだれも笑わないんだもの。
ローラが夫の誕生祝いにつくるケーキがターコイズブルーのクリームに紺色のフリル、黄色いバラ、このケーキがこの映画のすべてを象徴している。ケーキは白い生クリームに赤い苺が幸せの象徴じゃない?
ターコイズブルーのケーキ |
監督はウルフの気質をよく理解して丁寧に彼女をトレースしていく。三つの年代をうまくまとめ上げる手腕は大したもの。この映画に関係している、監督もバイセクシャル、原作のマイケル・カニンガム(Michael Cunningham)もゲイ。映画でも不協和音に同性愛が使われている。
ウルフとヴァネッサ |
ローラとキティ |
クラリッサとサリー |
それにしても、私は最後までウルフがニコール・キッドマンと思えなかった。彼女は特殊メイクの鼻をつけて最後までヴァージニア・ウルフを演じ私を騙し通した。
この演技で2002年アカデミー主演女優賞を受賞。またベルリン国際映画祭ではジュリアン・ムーア、メリル・ストリープを含む3人が銀熊賞を共同受賞した。
『めぐりあう時間たち』はゴールデングローブ賞 作品賞を受賞。
監督とニコール |
美しいニコール |
ウルフさん!私はあなたが軽蔑するであろうヒューマニズムをこよなく愛する者です