2018年10月1日月曜日

君の名前で僕を呼んで


『君の名前で僕を呼んで』(原題 Call Me By Your Name)


17才のエリオが、北イタリアの別荘で両親と一夏を過ごすところから映画のプロローグ。エリオは、アメリカの名門大学で教鞭をとるギリシャ・ローマ考古学教授の父パールマンと、何ヶ国語も流暢に話す母親の一人息子。教授にアシスタントとして招かれてやってきたのが24才の大学院生オリヴァー。彼は教授の助手で夏の間エリオたちと暮らすことになる。


早熟な聡明で芸術的センス溢れるエリオを演ずるのがティモシーシャメラ。映画関係者の多い家族の中で育っただけあって自然にハイクオリティの演技ができる逸材である。


映画の一コマが絵画になっている


この映画の魅力はセリフの芸術性である。どのセリフにも教養豊かな品の良さがある。上等な小説を読んでいるような。脚本のジェームズ・アイヴォリーの魅力であろう。この作品で第90回アカデミー賞脚色賞を受賞している。





エリオとオリヴァーの会話の一言一言にため息が漏れる。どちらもこの映画の設定と同じユダヤ系である。映画のリアリズムが人の心を打つ。映像のリアリズムは息を呑む美しさだった。どの風景も夢の中。





二人の肉体的絡みは、男女のラブシーンと違って斧で現実を断ち切るショックを与える。このショックがこの映画の非日常を生み出し非凡な作品に仕上げている。


ジェームズ・アイヴォリーはインド出身のイスマイル・マーチャントとプロダクションを設立し、マーチャントのプロデュース、アイヴォリーの監督のコンビで公私にわたるパートナー(同性愛)として24本の長編映画を製作した。この映画のエリオとオリヴァーはアイヴォリーのリアリティだと思う。


オリヴァーを演ずるアーミーハーマは大変魅力的で、裕福な家庭の遺伝子に溢れて最高の演技だった。彼の登場で画面がゴージャスになる。彼にはもっと大きな主役があるはず。スパイ映画の「コードネームUNCLE」を観たけれど、私は文学的役の方が彼の良さを引き出すと思う。




父パールマン教授のマイケル・スタールバーグは舞台出身だけあって重厚な演技で威厳に満ちている。実際に彼はジュリアード学校で美術学士を修めている。


まるでボナールの絵


エリオの母役のアミラ・カサールは仏語、英語、独語、伊語、スペイン語を話す超バイリンガルである。


魅力的な アミラ カサール


映画のエピローグは、オリヴァーから「婚約した」と電話連絡を受けるエリオの悲しみの場面。女性のようにエレガントなシャツを着たエリオ。私にはこの二人はこれから始まるのだとしか思えない。

この映画には美しい人、教養人、センスある人、思慮深い人しか登場しない。だから観客は桃源郷を感じ陶酔する。しかし、現実は必ず悪人の存在を認めている。



          





2018年3月21日水曜日

メアリーと秘密の王国



『メアリーと秘密の王国』(原題: Epic )は、
ウィリアム・ジョイスの絵本「The Leaf Men and the Brave Good Bugs」を クリス・ウェッジ監督が3Dアニメ映画化したファンタジーアドベンチャー。2013年20世紀フォックス配給。



メアリー アマンダ・ミシェル・サイフリッド(Amanda Michelle Seyfried)

は疎遠になっていた学者の父ラリーが住む森を訪ねるところから物語が始まる。
ラリーは森には高度な社会を築く「小さい人」が居る痕跡を調査、研究中なのだが、、、ひょんなことから森の中に入ったメアリーが、瀕死の森の女王クイーン・タラに出会い、「生命のつぼみ」を託される。「生命のつぼみ」が悪の勢力の手に渡ると森が滅びると知ったメアリーは、女王の兵士リーフマンノッドらと共に戦うことになる。




リーフマン leaf man。彼らは 葉っぱ兜をかぶる戦士である。


ノッド


女王を守るリーフマン隊長ローニンにはコリン・ファレル(Colin Farrell, 1976年5月31日 - )ダブリン出身のアイルランド人俳優。

同じく若きリーフマン ノッドにはジョシュ・ハッチャーソン(Josh Hutcherson)

女王クイーン・タラにはbig star ビヨンセ


女王タラ


腐敗の森に住む黒いマンドレイクのボーガンは腐敗領域を広げ緑の森を侵そうとする。マンドレイクには悪役オーソリティのクリストフ・ヴァルツ(Christoph Waltz)。

マンドレイクはナス科の薬草で容貌がゴブリンににて醜い、大体ナス科の植物は毒のものが多い。


マンドレイク
wikipediaより




錚々たるキャスト(声優)なのだけれど、それよりも森の中の観察というか描写が素晴らしい!

イントロで私はこの映画がアニメだということをすっかり忘れてしまった。パパの顔も鴉にも実写から導入かと騙された。そのくらいリアルなのだ。女王や凛々しいリーフマンの美しさ、つまり森の美しさに恍惚となってしまった。リーフマンが乘る鳥たちの素晴らしいこと。おそらく正確に野鳥をトレースしているに違いない。素晴らしい野鳥観察なのだ。野鳥のクリクリした眼の動き、羽のリアルさ。そこに小人のリーフマン。


鳥に乗るメアリーとノッド


ローニンとノッド


我々は大きくなった昆虫を見ることもできる。蜂や蝿にも関心。






小人のメアリーとパパ


画像はマンドレイク以外は
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