2016年9月20日火曜日

あの日のように抱きしめて

あの日のように抱きしめて
原題「Phoenix」




2014年ドイツ映画 2015年日本公開

監督 クリスティアン・ペッツォルト
ネリー ニーナ・ホス
ジョニー ロナルト・ツェアフェルト


1945年のベルリンといえば、ナチが崩壊し、ドイツの主権をどの国が掌握するかの大混乱期。ナチスの強制収容所で顔に大怪我を負った妻(ネリー)と変貌した妻に気づかない夫(ジョニー)の愛の不協和音をシビアにサスペンス風に描いた恋愛ドラマ。
 戦争がもたらした悲劇を、複雑な歴史を抱えるドイツの監督がサスペンス風につくりあげている。現代になってやっと戦火の事後結果を知ることができる、傷口を真摯に丁寧に、しかも映画として面白く仕上げている。



ネリーが強制収容所から奇跡的に生き残ったものの顔に大きな傷を負い、再生手術を受けるプロローグはドキドキハラハラ。ある意味のホラー映画ともいえる。




再会したもののジョニーは妻が収容所で死んだと思い込んで、顔の変わった彼女が自分の妻であることに気づかないばかりか、収容所で亡くなった妻になりすまして遺産をせしめようと彼女に持ちかける。二人のちぐはぐな心の葛藤をサスペンスドラマにしている。






自分を裏切った夫を許すのか? 自らを崩壊させるのか? 結果は観客にゆだねている。 
我々はドイツの戦後処理の精神的判断を強いられる。
私はこんな残酷な結果を処理できず考え込んでしまった。
タイトルの「あの日のように抱きしめて」は甘すぎる、原題は「Phoenix」。

前作に「東ベルリンから来た女」があるが、やはり観てみようと思う。

戦争なんていいことひとつもないじゃないの!