2016年2月15日月曜日

複雑に存在する Gender Identity




男が女を愛し、女が男を愛する。一般的な事実は全ての真実ではない。昨今、有名人はたまた一般人も堂々とカミングアウトして、自らの gender identity を公表することが多くなった。男が男を愛したり、女が女を愛する。男の躯を認められない男、女の躯を拒否する女。種々雑多な gender identity が存在する現代、複雑な社会構造を認めざるを得ない現代社会。

最近観た映画は複雑に存在する gender identity がモチーフになっていた。


2006年日本公開のコメディ映画『キンキーブーツ Kinky Boots』
伝統ある紳士靴メーカー プライス社 の跡取りチャーリーと、ドラァグ・クイーン(drag queen、drugと間違えないで)のローラが共に経営を立て直そうとする物語。




 ローラには、2014年アカデミー賞作品賞、脚本賞を受賞した『それでも夜は明ける』に主演した 
キウェテル・イジョフォー Chiwetel Ejiofor 

Chiwetel Ejiofor

 同じ人物とは思えないないほどどちらも見事に演じきっている。私的には、ドラァグクイーンのローラが好き!笑 このマッチョな風貌で異性装のローラ、演技力以外のなにものでもないでしょ。
 真っ赤な厚ぼったい唇でセクシャルに唄い、立てそうにもない恐ろしく尖った真っ赤なハイヒールで舞台を縦横無尽にダンスするローラ。物語の展開は単純でヒューマニズムに満ちたもの、何よりイジョフォー扮するローラの魅力的なドラァグクイーンの存在がこの映画の魅力の全てと云っても過言でない。特に舞台上のローラが。私は『ロッキーホラーショー』より『キンキーブーツ』の方が好き。



 2013年にはこの映画のミュージカル化作品である「キンキーブーツ」がブロードウェイでも上演されたらしい。

ブロードウェイミュージカルから


ポスターにもあるようにこの映画の主役は赤いハイヒールブーツ!



『わたしはロランス』
『Laurence Anyways(原題)』
カナダの新鋭グザヴィエ・ドラン監督による2013年日本公開のラブストリー



ロランス役を フランスの俳優メルヴィル・プポーが演ずる。坊主頭で赤いルージュにイヤリング、ハイヒールのインパクトはドキドキ、ハラハラ。いや~映画って面白いですね!笑

ロランスのカミングアウト
彼の革命
   


ロランスはトランスジェンダーなんだけど、恋人は女性なのよね。
ロランスの恋人フレッドを、ドラン監督の処女作『マイ・マザー/青春の傷口』にも出演したスザンヌ・クレマンが演じ、2012年カンヌ国際映画祭ある視点部門で最優秀女優賞を受賞した。
ドラン監督の選ぶ女性は、女性的魅力に欠けるのよね、どっちかと云うと母親的女性。彼の映画を観ると母親的女性しか感じない。それもそうでしょうゲイをカミングアウトしているから女性に対して異性感情を持ち得ない。彼の映画の面白さもそんな資質によると思う。以下の監督のコメントにも現れている。
「どうやら僕は自作の中で、自分の気持ちを明かさずにはいられない性質なんだ。それに、100%虚構だなんていう映画が実際に存在するとは思えないね。」



また彼のビジュアルセンスはハイグレード。どの映画でも色彩、空間処理、人物の仕草一つ一つにカメラアイのセンスの良さを感じる。質の高い絵画を観ているような。
かっこいいよね。

美しいドラン監督


『私が、生きる肌』『The Skin I Live in (原題)』
スペインの奇才、ペドロ・アルモドバル監督が、ティエリ・ジョンケの小説「蜘蛛の微笑」を原作に放つサスペンス。2012年日本公開 各国の映画祭で映画賞を受賞している。



世界的な形成外科医ロベル・レガルアントニオ・バンデラス Antonio Banderasは、交通事故で全身火傷を負い、非業の死を遂げた妻ガルを救えたかもしれない「完璧な肌」を作り出すことに執念を燃やし、軟禁されているベラエレナ・アナヤ Elena Anayaを実験台にして自らの開発した人工皮膚を使って彼女を亡き妻の姿に作り変えていく。











これはゴヤの裸のマハだな

何とも奇抜でショッキングなストーリーで映画を観た夜はよく眠れなかった。

人を殺さないで殺すとは、こんなことか? とにかく悲劇のベラ(地元の仕立て屋の息子ビセンテ)はどう生きるの? ビセンテ演じるヤン・コルネット(Jan Cornet)は、第26回ゴヤ賞(スペイン・アカデミー賞)で新人男優賞を受賞。

しかし、この映画のキーポイントはサスペンス復讐劇でなく、男と女の精神的肉体的genderにある。男を女に変える異常な欲望にあると思う。
この映画の奇抜さ異常さは、ピカソ、ダリ、アギーレを生んだスペインにある。

映画はスリリングで複雑怪奇ヒューマニズムで美しく醜く、私の映画狂は終わらない。